カビの危険性を知って正しい注意方法をおさえよう!

カビの危険性を知って正しい注意方法をおさえよう!

カビが人体に悪影響をもたらす、というのはイメージしやすいでしょう。ただ、カビの力でおいしくなっているチーズや、病気のときに助けてくれるカビが元で生まれた薬のように、必ずしも悪さをする場合ばかりではありません。家の中に発生するカビなど、身近なものにはよく危険性が伴いますが、この場合も危険度はケースごとに異なります。やみくもに怖がらず正しい知識を持って、適切な安全配慮を行い対策や予防につなげていきましょう。

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カビには毒がある?

カビの危険性と聞くと、一番に毒性が気になるのではないでしょうか。カビには、毒を作りだすものがあります。まずはこの「カビ毒」について詳しく見てみましょう。カビの力でおいしくなったチーズが食べられるように、結論から言えば、カビには必ず毒があるわけではありません。毒のないカビとカビ毒についての違いを知っておくと、危険がある場合もわかりやすくなりますよ。

カビ毒ってどんなもの?

カビ毒は、カビが作りだす化学物質です。全てのカビが作り出すのではなく、植物に寄生して病気にさせるカビや、穀物などを汚染してダメにするカビ、などが作り出すとされています。その数は300種類以上といわれているため、種類だけで把握するのは少し難しいでしょう。カビ毒が人や動物の体内に入ると、健康に悪影響が出るため注意が必要です。カビ毒のことは「マイコトキシン」とも呼ばれるため、合わせて覚えておきましょう。

カビ毒が発見されるきっかけとなったのは、第二次世界大戦後の輸入米がもたらした「黄変米事件」だったのだそう。黄変米と呼ばれたのは、カビの繁殖によってお米が黄色やオレンジ色に変色したことが由来です。人体に有害なカビ毒があり、強い肝機能障害などを引き起こす危険が挙げられ、輸入量も多かったことから社会問題となりました。

さらにその後、イギリスで七面鳥が短期間に肝臓障害で大量に死んでしまった事件「七面鳥X病」が起きます。これは、七面鳥のエサに含まれていたカビ毒が原因でした。これらの事件によって、カビ毒の危険性が注目され、さまざまな研究が行われるようになったのです。

カビ毒の危険性と特徴について

カビ毒が危険なのは、健康被害が起きるからです。カビ毒には種類があるため一概には言えませんが、肝臓や腎臓、胃腸などにダメージを与えたり、造血機能障害や免疫機能不全が起きたり、強い発がん性があるなど、さまざまな危険性が挙げられています。

食品に発生したカビで特に注意したいポイントは、カビ毒は熱に強い、ということです。カビそのものは加熱によって死滅しますが、カビ毒はそれとは別に考えることが大切。100度以上で加熱し、200度を超えても完全に分解することはできないと言われています。また1時間加熱したとしても難しいのだそう。そのため、一般の調理過程で利用する温度ではカビ毒の対処は困難です。カビ毒のあるお米を炊いたり、他の食べ物でも茹でたり炒めたりしただけでは、カビ毒はほとんど減らないという結果も出ています。

また、カビは肉眼で確認できても、カビ毒は目視確認が難しいため、見た目で判断できないことも危険なポイントです。目で見ても確認できず、普通の調理では防げない、ということから、カビ毒を避けるためには毒を発生させるカビそのものを防ぐことが大切になります。

ちなみに、食品が専門的に製造される過程では、食品添加物によってカビ毒が完全に除去される場合もあります。トウモロコシから油を作る場合、製造工程の中でアルカリ剤の食品添加物が使用されることで大半のカビ毒が分解され、精製工程を重ねると完全に除去されるのだそう。識別ができるナッツなどは、機械なども利用し悪くなっているものを除去することで防いでいます。

カビ毒の発生する可能性や検査状況について

例えば、発がん性のあるカビ毒の種類は熱帯や亜熱帯地方に多い、などの特徴もあります。地域や気候状況によって発生しやすいカビがあるなど、世界に目を向けてみるとカビ毒の影響はさまざま。国内では発生しにくいカビ毒も、輸入品に付いている可能性があるでしょう。また、カビ毒のある食べ物を直接口に入れるだけでなく、カビ毒の発生したエサを食べた家畜についても注意は必要です。お肉やミルクにカビ毒が移行して、それを経由して食べてしまうこともあります。

ただ、やみくもに心配する必要はありません。カビ毒についての規制が設けられているため、国によるカビ毒の予防措置は行われています。年数を追うごとに、新しく対象の種類が追加されるなど、厚生労働省などで調査研究が行われているのも安心につながるポイント。家畜が食べる飼料についてもカビ毒の規定は設けられていますよ。

カビ毒の主な種類について

カビ毒には主な種類が挙げられていますが、この中でも穀類に発生するカビ毒は多数。発がん性のあるカビ毒でメジャーな「アフラトキシン類」は、穀類のほか、ナッツ類、ドライフルーツ、牛乳、香辛料などで確認されています。ただアフラトキシンは国内産の食品からは発見される可能性はほとんどなく、主に輸入品に対して注意されているものです。

「オクラトキシン」は、穀類や豆類、フルーツ、コーヒー豆、カカオ、ワイン、ビール、香辛料など多くの食品に発生するカビ毒。ABCなどの種類があり、オクラトキシンAは中でも毒性が強いといわれていますが、汚染はまれな側面も。人への被害では流行性腎臓病などがありました。

「トリコテセン類のデオキシニバレノール及びニバレノール」もよく挙げられるひとつ。農作物の赤カビ病の原因となるカビから作られるカビ毒です。嘔吐や下痢、食欲不振などの消化管障害や免疫毒性などの危険性が挙げられています。小麦や大麦、トウモロコシなどの穀類に発生することが多いでしょう。

「パツリン」と呼ばれるカビ毒は、リンゴに影響するものです。リンゴに傷などがあると、土の中のカビが傷から果実の中に入って、リンゴを貯蔵しているうちに中で増殖してカビ毒が作られるのだそう。脳や肺の浮腫や臓器の出血などのトラブルが挙げられています。リンゴそのものだけでなく、リンゴジュースなどの加工品にも影響するのが厄介なところです。

生活の中でカビがもたらす危険性

日常生活では、食品に生えるカビと住居に生えるカビなどに注意する必要があります。食品の場合は、チーズなどのように元々製造過程でカビが利用されていないものは、カビによって味や匂いが変わりおいしくなくなります。腐らせてしまうほか、カビ毒の危険性があるため、カビが生えた時点で危険が伴うでしょう。カビ毒自体は目に見えないため、カビの部分だけを取り除いても危険が残ります。カビの生えたものは食べない、というのが安全な方法ですね。

住居の場合は、家の材質に使われている木材や畳、エアコンのカビ、などに注意しましょう。住居の場合は、カビを吸い込んでしまうことなどが危険なポイント。アレルギー反応を起こしたり、肺炎につながったりします。

例えば、夏の間に発症する夏型過敏性肺炎もカビが原因。秋には症状が軽くなるため、見過ごされてしまいがちですが、年々繰り返すと慢性化して重症化することもあるため注意が必要です。また肺の細胞内でカビが繁殖してしまう肺アスペルギルス症も重い病のひとつ。繁殖してしまうと簡単には取り除けないため重要視されています。喘息やアトピー性皮膚炎などの原因にもカビは関わってくるため、アレルギー疾患のある人もカビには気を付けてくださいね。ほかには、身近な病気のひとつ水虫もカビが原因で引き起こされます。

カビの特性を知って危険を回避しよう

カビにはさまざまな危険性が潜んでいますが、しっかりと予防や対策を行えば危険を回避しやすくなります。カビの正しい知識が備わっていると、体調不良に気付かずに見過ごしてしまう心配も防げるでしょう。カビのデメリットを上手に予防して、健康的な生活につなげていってくださいね。