「家の中にいるだけで感染?!カビ菌がもたらす肺炎の危険性と予防について」

「家の中にいるだけで感染?!カビ菌がもたらす肺炎の危険性と予防について」

外出先ではさまざまな病原菌に触れる可能性があるので、家に帰ったら手洗いやうがいは必須ですね。風邪予防の基本でもあります。とはいえ、家の中が必ずしも安全とは言い切れないことも。家の中にあるカビによって病気になる可能性もあるのです。肺炎もカビがもたらす病気のひとつ。今回は、カビと肺炎の関係から、その危険性、予防法についてまとめてみました。

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カビと肺炎の関係性&カビが原因で起きる肺の病気は複数!

カビが原因で起きる病気にはいろいろなものがあり、肺炎もそのひとつです。とはいえ、肺炎になる原因はカビだけではなく、カビがもたらす肺の病気は複数あるのが難しいところ。カビが原因で起きる肺の病気では、カビによる肺のダメージという部分は共通していて、症状も似たようなものが見られるなど、詳細は少しややこしいです。そのため、まずはカビによって引き起こされる肺炎や肺の病気について、全体的な背景を見てみましょう。

そもそも肺炎って?

肺炎は、文字通り肺に炎症が起きている状態です。症状としては、咳やたんなどが出たり、熱が出たりします。風邪の場合でも同じような症状が出ますが、肺炎はまた別で、肺の中に感染が起きているのが特徴。咳やたん、発熱などの症状が出なくても肺炎になっていて、気が付かないうちに重症化するケースもあり、注意が促されています。

肺炎の原因はさまざまで、細菌やウイルスなどのほか、感染の原因によって詳しい名前が付いています。高齢者によく注意されている中に誤嚥(ごえん)性肺炎がありますが、これは食べ物や飲み物が間違って気管から肺に入ることで起きてしまう炎症です。これもまた、唾液や食べ物、飲み物に含まれている細菌が原因となります。

カビが原因の肺炎について

カビが原因で引き起こされる肺炎では「夏型過敏性肺炎」と呼ばれるものがよく挙げられます。ただ、これ以外にもカビが原因で肺に病気が起きるものが複数あるので、合わせて注意が必要です。これらの病気も肺炎と似た症状の場合があり、見分けが難しいといわれることも。いずれにしてもカビが原因で起きる肺のダメージなので、まとめて知っておくと安心ですね。

カビによって引き起こされる肺の病気

カビのことを真菌と呼ぶ、というのは以前のページで説明しましたね。カビを吸い込むことで肺に発病する感染症のことを肺真菌症と言います。カビがもたらす病気は水虫のように皮膚に現れる症状もありますので、肺真菌症はカビのもたらす病気のひとつです。ただカビにはたくさんの種類があるように、カビによって引き起こされる肺炎にもいくつかの種類があります。

カビによる感染が内蔵に影響するものを深在性真菌症と呼びますが、主に肺に症状が出る場合もあれば、肺だけでなく脳や脊髄などにも症状が出る場合もあり、病気の内容は複雑です。専門的な知識も必要になりますが、主に挙げられる病気を知っておくだけでも予防や対策に役立つでしょう。

夏の間は特に注意!「夏型過敏性肺炎」

「夏型過敏性肺炎」は、過敏性肺炎という病気の一種です。過敏性肺炎は、有機物や化学物質などを吸い込むことで起きるアレルギー反応が主な原因。肺胞と呼ばれる肺の中にある小さな空気の袋や、細気管支と呼ばれる肺の中の細い気道などに炎症が起きます。過敏性肺炎の原因は複数ありますが、トリコスポロンというカビが原因で起きるものが「夏型過敏性肺炎」です。トリコスポロンによる「夏型過敏性肺炎」は、過敏性肺炎の中でもよく見られる病気で、日本で起きる過敏性肺炎のうちの約7割といわれることも。身近な病気のため、日頃から気を付けておく必要があります。

トリコスポロンは白カビで、室内の湿気の多い場所、換気のしづらい場所に発生しやすいのが特徴。身近な病気といわれるのは、エアコンが原因となることが多く、台所や浴室にも繁殖しやすく、家の中の複数の場所に生える可能性があるからです。建築木材の腐食した部分にも生えやすいので、古い家屋も注意が必要になるでしょう。このトリコスポロンは高温多湿を好むので、6月~9月にかけて活発に活動します。そのため「夏型過敏性肺炎」も同時期に症状が起きることから、夏型と呼ばれているのです。

どんな症状が出るの?

症状としては、カビを吸い込んでから約4時間~6時間後に、咳やたん、発熱、だるいなどの症状が出てきます。夏風邪に似ていて気が付きにくいのが難点。放っておくと症状がどんどんひどくなり、息切れや呼吸困難などを引き起こします。ただ、カビのいる環境を離れると症状は良くなるので、夏が終わったら自然に完治した、と感じることも。そのため風邪なのかな、と思ううちに見過ごしてしまう場合があります。外出していると良くなる、家で休んでいるときにひどくなるなどの場合は「夏型過敏性肺炎」の可能性が考えられるでしょう。

危険なのは、何年も同じ症状を繰り返すことで、慢性的な病気にかかる場合があることです。例えば慢性化して「間質性肺炎(肺繊維症)」になると、肺が硬くなり深呼吸などがしづらくなってしまいます。一度肺が繊維化すると柔らかい状態に戻ることはないため、注意が必要です。

対策は?

まずは予防から心がけましょう。温度や湿度などカビが発生する環境の特徴をおさえ、家の中をできる限りカビの生えにくい状態にして、エアコンや加湿器などはこまめに掃除を行います。台所や浴室など水回りは掃除のほか換気も心がけましょう。家自体の木材の腐食も原因になるので、メンテナンスやリフォームも場合によって検討してみてください。そして病気の可能性が疑われる場合は早めに病院で診てもらうことが大切です。

肺真菌症にも気を付けておこう!

肺真菌症は近年増加傾向にあるといわれています。身近に存在するカビが原因で、免疫力が低下していたり、ほかの病気の治療やステロイド剤を飲んでいたりするとかかりやすくなります。ただ、健康な人でもかかる感染症があるため、常日頃気を付けておきましょう。

アスペルギルス症

肺真菌症の中でも最も多いといわれている病気で、原因はアスペルギルス属のカビによる感染です。免疫力が低下しているとかかりやすくなり、「侵襲性(しんしゅうせい)アスペルギルス症」の場合は、病状が急速に進行するため命の危険が伴います。

感染症ではありませんが、アレルギー反応から起こる「アレルギー性気管支肺アスペルギルス症」というのもあり、喘息や呼吸器の病気を抱えている人は特に注意が促されています。

クリプトコックス症

クリプトコックス属のカビによる感染症です。ハトのフンが乾いたものなどにいるカビが空気中に飛散して、主に肺や皮膚から感染するなどして病気になり、中枢神経系に影響を及ぼすと脳髄膜炎などになります。この感染症は、免疫力が低下している場合だけでなく、健康な人にも発症するのが特徴です。

ムーコル症

ムーコル属などのカビによる感染症です。カビを吸い込むことで副鼻腔や肺などから発症し、脳に影響を与えることも。肺型や皮膚型、消化管型などの種類も挙げられています。一般的には発症しにくいものの、極度に免疫力が低下しているとかかります。急速に症状が進行して、真菌感染症の中では最も治療の見通しが良くないといわれることも。死に至る危険性も高いため注意が必要です。

日頃のケアでカビによる肺炎を防ごう!

カビがもたらす肺の病気はさまざまで、決してあなどれません。でも普段のカビケアで日常のリスクを減らせるでしょう。カビは放置せずこまめにケアして発生を防ぐことが大切。免疫力が下がるとカビによるダメージのリスクも高まるので、日常生活も健康に気を付けて病気の予防につなげていきましょう。