「カビ」と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか? 気持ち悪い、嫌なもの、困るもの、何とかしたい……などなど。そうですよね。カビはさまざまなトラブルを生むので、できれば避けて通りたいものです。とはいえ、トラブルの解決には詳しい知識を持つことも大切。まずは、“カビとは何なのか?”について詳しく見ていきましょう。
Contents
カビは生き物、良い一面もある?
幅広く見てみると、カビには良い面も悪い面もあり、必ずしも人間に対して害ではないのがわかります。いつも食べているキノコやチーズにも、カビが関わっているんですよ。
最初に、カビの根本的な分類やどのような特徴があるのかを見てみましょう。私たちの生活に害になるカビはケアする必要がありますが、生活の中ではカビに助けられていることもいろいろあります。
カビとキノコは同じ仲間
「カビ」という名前は一般的にわかりやすい通称です。実際のものは微生物やその集まりで、原生生物と呼ばれる種類の生き物のひとつ。詳しくは「真菌」という分類にあたります。
真菌類にもいろいろな種類があり、例えば日常の食事で食べているキノコもその仲間。シイタケやシメジ、マツタケなどは「担子菌類」と呼ばれ、こちらも真菌の仲間なんですよ。カビとキノコが同じ仲間、と聞くと嫌悪感も少し解消されるのではないでしょうか。
私たちがよく見かける食品のカビは「不完全菌類」と呼ばれますが、水中に発生するミズカビは「鞭毛菌類、ケカビやクモノスカビは「接合菌類」など、カビにもいろいろな種類があります。
食品や薬で活躍するカビ
ちなみに、ケカビやクモノスカビは発酵食品を作るときに使われることもあり、大いに活躍している一面もあるんですよ。カビが活躍してくれる食品ではチーズもよく知られるひとつ。青カビタイプ、白カビタイプ、などと呼ばれるように、カビなしではおいしく食べられないグルメです。クリームのようになめらかなカマンベールは白カビ、ちょっとクセもあるけど深い味わいのブルーチーズは、名前の通り青カビが使われています。
また、抗生物質のペニシリンも青カビから発見されました。悪者にされがちなカビですが、日常生活の中で助けられている部分もたくさんあるんですね。
カビと細菌は違うの?
カビは真菌と聞くと、細菌も同じ仲間かな、と思いがちですが、カビと細菌は別物。細胞の作りから違います。細菌の場合は「原核生物」と呼ばれ、細胞そのままの中にDNAがありますが、カビの属する真菌は、細胞の中の核の中にDNAがある構造。カビは「真核生物」と呼ばれる種類で、私たち人間と同じです。細菌は単細胞生物で、カビは多細胞生物の分類にあたります。
ちなみに、人間が誕生したのが約700万年前で、カビが誕生したのは約10億年前なのだそう。私たちよりもずっと前からカビはこの世界で生活していたんですね。
カビにはたくさんの種類がある!カラフルな色との関係とは
カビの種類は数えきれないほどで、数値にすると9万種類以上あるのだそう。これには、食品で活躍しているキノコや酵母なども含まれています。名称のほかには、色で見分ける方法も。全てを把握するのは難しいですが、ちょっとした特徴を知っておくとカビ対策にも役立ちますよ。
カビは、主に菌糸と胞子と呼ばれるものから成り立っていて、胞子は棒のような形や丸い形など、さまざまな形をしています。多くはこの胞子の色がカビの色なのだそう。性質によっていろいろな色をしています。家の中の壁などに生えるカビでは、黒いものが多いのであまり印象は良くないと思いますが、これもまたカビを見分けるときの色の特徴です。
黒いカビ
黒いカビは、湿度が高いところに発生するカビです。湿気が溜まりやすい部屋に現れやすいでしょう。特にお風呂場に生えやすいですが、結露が溜まりやすい冬場のカーテンや、エアコン付近にも登場します。気が付いたらカーテンの裾が真っ黒に……なんてことも。
部屋の壁に限らず、衣服や食品にも生えます。また、空中に多く分布している種類であることも特徴。見てわかる部分だけに限らず吸い込んでしまっていることもあるため、喘息やアレルギーのある人には注意が促されることがあります。
赤いカビ
赤いカビは、野菜畑などに現れるので、園芸や農作業をしている人にはなじみがあるかもしれません。黒いカビと同じく、湿度が高いところを好むカビの種類。土の中や汚水などにいるほか、麦やとうもろこしなどの作物に生えることもあります。
家の中では、エアコンのフィルターなどに生えることもあり、金属やプラスチックなどの素材の上でも生きられるのが特徴です。ただ、お風呂場の床などに現れる赤い汚れは、また違う酵母の場合もありますよ。
食品では、古くなったパンやご飯に赤カビが生えることがあるので、間違って食べないように気を付けましょう。赤カビは危険性の高いカビ毒を作るため、食中毒症状を起こす場合があり注意が促されています。
青灰色や緑色のカビ
青灰色や緑色のカビは、黒いカビや赤いカビの好む環境より湿度が低いところでも発生します。比較的、乾燥に強いことも。置いてあったミカンがいつの間にか、緑っぽいカビに覆われてしまった、なんてこともあるかもしれません。ビロード状にカビが増えていきます。
フルーツやお菓子、パンなど、食品に生えやすいほか、ハウスダストなどの中にもいます。青カビは、ブルーチーズやペニシリンなどのように無害なものもあるのですが、生えたものを安易に食べるのは危険。有毒なカビ毒を作るものもあるので、注意しましょう。
黄土色のカビ
黄土色のカビも、青カビなどと同じ湿度環境で発生します。こちらも、パンやお饅頭などのお菓子、ナッツ、穀類などの食品に生えるほか、ハウスダストなどの中にもいるのが特徴。
種類としては、コウジカビなどがありますが、コウジカビは青カビのように食品作りに利用されるカビでもあります。発酵食品を作るのに活躍してくれますが、人間に感染して病気の原因になるものもあるため、良い面ばかりではないのが注意点。カビ毒と一緒に食品に生えることがあるので、こちらも注意が必要です。
黄橙色のカビ
黄橙色のカビは、黒カビや青カビよりももっと低い湿度65%くらいの場所でも発生するカビです。乾燥した場所を好むタイプで、乾物や穀類などに生えることがありますが、必ずしも乾燥した場所だけを好むとはいえないことも。高い湿度環境でも生えたケースがあるので、生えやすい環境が広いという見方もできます。また、食品に限らず、カメラのフィルムや精密機器の基盤などに生えることがあるのも特徴。
種類としては、カワキコウジカビなどがあります。カワキコウジカビは、かつお節を作る過程で活躍している一面もあるユニークなカビ。かつお節の水分を蒸発させて、旨味や香りを引き出すのに貢献しているんですよ。
小豆色のカビ
小豆色のカビもまた、黄橙色のカビと同じように湿度の低い環境で発生するカビです。アズキイロカビなどの種類があります。特徴は糖度の高い食べ物に生えやすいこと。チョコレートやカステラ、ケーキ、羊羹などのお菓子のほか、干し柿なども注意が必要です。
また、保存食でもあるジャムに生えてしまうことも。乾いた環境が好きなカビはハウスダストなどの中にもいるので、空気に触れたスプーンに付いてジャムに入ってしまう可能性もあります。アズキイロカビは、糖度がやや低めの65%ほどでも生えてしまうので気を付けておきましょう。
まずはカビについて知るところから始めよう
カビについて調べるのはあまり気が進まないこともあるでしょう。でも、特徴を知っておくだけで、より予防やケアがしやすくなりますよ。トラブルを解決するには、まずトラブルの原因を知るところからスタート。カビに詳しくなって、上手に付き合っていきましょう。